輸出を始めようと考えている人や輸出を始めて間がない人によく聞かれることに「いつから輸出を始めてますか?」があります。
私は、2004年に輸出を始めてみようと思うきっかけがありました。丁度、そのとき私は、近畿清酒青年協議会の会長をしていました。酒造業の2代目組織で、私が所属していた兵庫県清酒青年協議会の上部組織になります。この会長を4年間させて頂いている、2004年のことでした。
当時、リーガロイヤルホテル大阪で「和魂洋才」という蔵元2名が参加してフランス料理を楽しむ会がありました。その蔵元は近畿清酒青年協議会のメンバーが順番に参加させて頂いていました。後に日本ソムリエ協会の会長を6年間された岡さんが当時企画されたイベントで200回以上続きました。そんな関係もあったある日、岡さんからお電話を頂きました。「シンガポールにいる昔の仲間から助けを求められたので助けてくれないか」と言うものでした。内容は、シンガポールにある「Wine & Dine」と言う雑誌(日本版あまから手帳)が日本酒のコンペティション(品評会)を企画したんだけれど応募が全然なくて困っていると言う話でした。困った編集長がシンガポールの日本食店に助けを要請し、そこのマネージャーが昔の職場のリーガロイヤルホテルの岡さんを頼ってきたと言うことでした。そこで、近畿清酒青年協議会のメンバーやそれ以外の地域の蔵元にも案内をして日本から日本酒を送付しました。
みんなに協力を言った手前、ちゃんと審査が行われるのか不安もあり岡さんと一緒にシンガポールまで行きました。審査会場になった日本食レストランも素晴らしいレストランでしたし審査も厳正に行われました。そしてここに来て、一つ気づいたことがありました。海外に日本酒を輸出する可能性があると言うことでした。ただ、この時は輸出を行うために必要なことの知識もノウハウも全く気づいていませんでした。知らなかったからこそ、エイやっと気合いで挑むことが出来たのかも分かりません。
当時、会社の将来を考えると明るい未来が全く見えていませんでした。「清酒 明石鯛」のブランディングもうまく行かず甲類焼酎も価格競争の真っ只中でした。この状況を打破するのは輸出ではないかと思いました。海外で成功して日本に凱旋帰国する。これだと思いました。
そして、翌年の2005年に偶然見つけたのがイギリスで行われる展示会出展の案内でした。JETROが「IFE ロンドン2005」にジャパンパビリオンを出展するので出展者を募集していたのです。後先を考えずに出展申込を行い、幸運にも出展者として選んで頂きました。
さぁ出展に向けて何をすれば良いのか、全く考えていなかったので焦りつつ必死に考えました。今なら簡単に考えることができますが。
展示会に出展する際に必要なもの
展示会に出展前に準備すること
- パンフレット 英語は必須。さらに例えば中国であれば中国語といった現地で使われる言語のもの。予算が無ければリーフレット。英語のパンフレットは、展示会への参加の有無は別にしても作っておくと国内で行われる商談会でも使用出来ます。
- サンプル 売り込む商品サンプルですが現地で販売可能な商品であるか事前に確認が必要です。例えば、卵を使用したものをEUに輸出する際は多分確認が必要だと思います。そして、どれだけのサンプルを展示会に使用するのか。どうやって展示会場まで届けるのか。日本では、会社から宅急便で送れば翌日にはブースまで届けてもらえるような国は無いことを頭に入れておかないといけません。展示会開催日までにサンプルが届かない会社を何度見たことか。サンプルもどれだけの数を持っていくのか良く考えて下さい。せっかく現地まで行くのだからサンプル切れを起こしたく無いので多目に持って行きたい気持ちは分かります。でも送るのには運賃も掛かりますし持って帰ることも出来ません。ちなみに私は最初の頃持って行っていたサンプル量と現在を比較すると三分の一くらいです。売りたい商品を明確にして行くことも大事です。
- デコレーション 隣のブースと差別化するためにもブースの見せ方も大事になります。ただ、日本語のポスターをいっぱい貼っても日本語が分かる人がいなければ無駄に見えます。富士山など写真が大きいものは目を引くので有りだとは思います。私は、酒器や暖簾などを持って行きます。
- ホテル 展示会に出展している間、自分の自宅となる場所です。宿泊料金のチェックも大事ですが展示会場までのアクセスはもっと大事です。帰りはタクシーと思っていても簡単には拾えません。私はUberを良く使いますが展示会終了時刻は値段も高いです。また展示会場横にあるホテルは会場に近い反面夕食を外で食べようと思っても周りに何もなくホテルでしか食べることが出来ないなんて状況にもなりかねません。場所選びは慎重にしましょう。
IFEロンドン2005の成果は
1日目にブースを訪れた人は優に1000名を超えました。後半はトイレで持って来た試飲用のプラカップをずっと洗っていました。夜は、プラカップを探しに深夜までロンドンを彷徨ったことが懐かしいです。最終日まで人が絶えず訪れました。そして、展示会が終了して2ヶ月後。当初の目的の輸入代理店を見つけることは未達成に終わりました。輸入に興味を示してくれる人はいましたが日本に帰国してから連絡しても返事はほとんど返って来ませんでした。展示会で興味を持ったレストランもみんなが異口同音に「ディストリビューター」が決まったら連絡下さいと。結果は、売上ゼロでした。
ただし、ここに出展したことで私の輸出成功への第一歩が思いもかけない場所からやって来ます。
そして、一番大事なことは、早くから輸出を始めたことが成功の鍵では無いことです。今から始めても決して遅く無いことだけは言えます。